諸君、私は高速で回るものが怖い。
諸君、私は非常に高速で回るものが怖い。
風車が怖い。
タイヤが怖い。
プロペラが怖い。
ミキサーが怖い。
ドリルが怖い。
レコードプレイヤーが怖い。
セメントミキサーが怖い。
洗濯機が怖い。
ファンが怖い。
平地で、坂道で。
工場で、家庭で。
空港で、農場で。
道路で、建設現場で。
台所で、屋外で。
この世界中で見られるありとあらゆる回転するものが怖い。
巨大な風車が風を切る音が、ブンブンという音と共に聞こえるのが怖い。
道路を走るタイヤの轟音が、地響きと共に広がるのが怖い。
小さなドリルが鉄板を突き破るのが怖い。
キッチンのミキサーが食材を粉砕するのが怖い。
大きなファンが空気を巻き上げるのが怖い。
洗濯機が衣類を回転させる音が、ゴロゴロという音と共に聞こえるのが怖い。
どんなに小さなプロペラでも、その回転する姿が怖い。
どんなに遠く離れたセメントミキサーでも、その回転する音が聞こえるとき、恐怖を感じる。
諸君、私はコントロールできない回転を恐れている。
諸君、私に付き従う友達諸君、
君達は一体何を恐れている?
更なる高速回転を恐れるか?
制御不能になった恐怖の回転を恐れるか?
全てを巻き込む破壊的な力の回転を恐れるか?
『恐怖! 恐怖! 恐怖!』
よろしい、ならば恐怖だ。
我々は身の毛もよだつ恐怖に打ち勝つために今こそ立ち上がらねばならない。
だがこの見えない恐怖の影で何年もの間、耐え忍んできた我々にただの回転ではもはや恐怖ではない!!
大きな恐怖を!!
一心不乱の恐怖を!!
我らはほんの一握りの人々に過ぎない。
だが諸君は恐怖に立ち向かう勇者だと私は信じている。
我々を忘却の彼方へと追いやり、眠りこけている連中を叩き起こそう。
髪の毛をつかんで扇風機の前に連れて行き、眼を開けさせ、乾燥させよう。
天と地のはざまには、奴らの哲学では思いもよらないことがあることを思い出させてやる。
一握りの回転恐怖者で、世界を回転の恐怖で覆い尽くしてやる。
「最後の大隊、大隊指揮官より全空中艦隊へ」
第二次ゼーレヴェー作戦 状況を開始せよ。
征くぞ、諸君。